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2月26日(日)「革命伝説・宮本研の劇世界」

 日本近代演劇史研究会編(社会評論社)
 この本は、初期作品「僕らが歌をうたう時」・「人を食った話」・「反応工程」/「明治の柩」/ザ・パイロット」/「美しきものの伝説」/「聖グレゴリーの殉教」/「夢・桃中軒牛右衛門の」/「からゆきさん」/「新釈・金色夜叉」/「冒険ダン吉の冒険」/「新編・吾輩は猫である」/「高崎山殺人事件」/「花いちもんめ」が取り上げられ、論及されている。
 この中で私の観た芝居は、「明治の柩」、「ザ・パイロット」、「美しきものの伝説」、「夢・桃中軒牛右衛門」の4本だけだ。この本を読むまで、知らなかった作品もある。このまえ伊藤真紀さんが書いた「夢・桃天軒牛右衛門」のことを書いたときも書いたが、ちょうど新劇が凋落しつつあり、アングラ演劇が勃興してきた時期で、そのとき新劇の最後のといってもいい力のある劇作家は福田善之と宮本研であり、宮本は、新劇の最後の光芒を放っていたことが、この本を読むとよく解る。そして、現在宮本のように時代や歴史を骨っぽく批判し劇化した作家はいなくなっとことの確認ができた本だった。つまり新劇を支えていた左翼インテリゲンチャとい種族が絶滅したことであり、左翼そのものが存在しなくなったことでもある。社会批判を中心にしている中津留章仁のような作家は現在もいるが、いわゆる左翼ではないし、時代そのものが変わってしまったことを強烈に知らされた本だった。この本から新しい再評価がはじまり新しい上演がみられること、それはもう文化座の「反応工程」や流山児★事務所の「メカニズム作戦」などではじまっているが、それを期待したい。

by engekibukuro | 2017-02-27 10:05 | Comments(0)  

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