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5月29日(月)「シアターアーツ 春 61」

この号、2016年の回顧特集では、ダンスの作品を取り上げた。坂口勝彦「幻想の日本を踏み越えるために」がとても読みごたえがあった。2016年のダンスおよびダンスに準じる作品から、山田うん『デイクテ』、Noism『ラ・バヤデールー幻の国』、SPACK『イナバとナバホの白兎』の3作品を取り上げている。山田うんのソロ「デイクテ」はテレサ・ハッキョン・チャによる同名の著作に触発された作品で日本の朝鮮支配を、Noism「ラ・バヤデールー幻のの国」は”かっての日本の希望であり、戦争への道を用意することいなる満州国をバレエ作品の核に据えたという意味で画期的な作品となるべきものだ。”この作品は、金森穣か平田オリザに脚本を依頼した。SPACと宮城聡の「イナバとナバホの白兎」はパリの「クロード・レビイ=ストロース劇場」に委嘱されて、日本では駿府城公園で上演された。「韓国併合、満州国、大国主命・・・すべては幻の日本だった」、現在の国家が戦前の素晴らしい日本を呼び戻すような幻想を振りまいているような事態を、坂口はダンスおよびダンスに準じる作品をとりあげて批判した、私にとっては未知の世界への教示でほんとうに有益な論考だった。ほかに嶋田直哉「評伝劇の方法ー井上ひさしと長田育恵」が長田の「SOETSU」をとりあげ、井上の最後の弟子である長田が、いかに井上の方法をきちんと学んだかを詳細に論じて立派な論文だった。それと、イキウメの前川知大の作品を取り上げた小田幸子「現代演劇にみる能舞台の変容」が非常に有益だった。


by engekibukuro | 2017-05-30 07:16 | Comments(0)  

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