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6月9日(金)「人間とは何か」マーク・トウエイン

大久保博訳、角川文庫
若者と老人の対話集。老人は、人間は自分からは何ひとつ出来ない外部に反応する機会に過ぎないと言い張る。若者は、「でも・・・シェイクスピアが想像したものはー」と問う。老人は「いや、それを言うなら、シェイクスピアが模倣したものは、というべきだな。シェイクスピは、何一つ創造などしなかったんだからね。シェイクスピアは、正しく観察した。そして、素晴らしい筆づかいで描いた。彼は人間を正確に描写した。しかし人間は神が創造したものであって、シェイクスピア自身は、たったひとりの人間でさえ創りだしはしなかった。創造しようとしたけれど失敗したのだ、などと言って彼を中傷するのはようそう。シェイクスピアは、創造しようとしてもできなかった。彼は機会だったからだ。そして機械は創造などしないからだ。若者ーそれじゃ、シェイクスピアの素晴らしさはどこにあったのですか。老人ーそれは、こういうことの中にさ。つまり、シェイクスピアはミシンではなかった。きみやわしと違っていた。ゴブラン織りの織り機械だったのだ。・・すべての糸とすべての色が彼の中に外部から入ってきた。・・・・それらが彼の心の中に様々な図案を創り上げ、彼の心の複雑な賞賛すべき機械を起動させたのだ。・・・。その他、このペシミステイックな老人は、いろいろな人間観をはんすのだが・・。題名しかしらなかったこの本が、ようやく文庫版で読めて面白かった。

by engekibukuro | 2017-06-10 07:32 | Comments(0)  

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