6月6日(水)M「夢の裂け目」新国立劇場

作:井上ひさし、演出:栗山民也、音楽:クルト・ヴァイル、宇野誠一郎
快作だ。クルト・ヴァイルの音楽を主体にした、この音楽劇は現在の日本をあぶりだした見事な舞台だった。パンフに現在もっとも信頼できる思想家・政治学者の白井聰を起用したのも時宜を得ている。”戦後の始まりにおける最大のねじれは、国家指導を誤り、国を破滅させたことの責任(敗戦の責任)という戦争責任の一丁目一番地を、日本国民自らが追及できなかったことにある、と私は思っている。追求しようにも、指導者たちはGHQの手によって拘束され、東京裁判の法廷へと引き立てられていた。私たちは、自らの指導者を裁くことすらをも禁じられる、言い換えれば、主権者であることを禁じられるほどの壊滅的な敗北を喫したのである。その敗北の底知れぬ意味は、おそらくいま、日本の特殊な対米従属という「戦後の国体」が、国際関係を不健全なものにするだけでなく、国民の精神を腐食させ、従属を従属と感じなくなったといかたちで表面化しつつある。私たちはいま、「平和と繁栄」としての戦後という<夢>の<裂け目>の只中にいるのである。”この文章に含意された事実と人間の営みが、この紙芝居屋が東京裁判の検察側証人として出廷するという芝居の中心となり、現在を照らし出すのだ。それは紙芝居屋の親方を演じ段田安則以下の演技陣の緊密なアンサンブル、要所々をきちんと制御し、強調した栗山の演出の力だ。新国立劇場の開場の芝居「紙や町さくらホテル」を書いた井上のこの芝居が劇場へのさらなる貢献だったこと。2001年初演のこの芝居の、そのことを改めて感じた今回の再演だった。
・北斗賞・堀切句:”色鳥や神話の国に来てあそぶ”、”ひょんの実を出雲の国に鳴らしけり”、”冷ややかに百科全書の革表紙”

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by engekibukuro | 2018-06-07 10:04 | Comments(0)  

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