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「から騒ぎ」さいたま藝術劇場10月7日S

作:シェイクスピア、訳:松岡和子、演出:蜷川幸雄。さいたま藝術劇場シェイクスピアシリーズ第20弾。このところ一作一作が充実して前進している蜷川演出作品だが、この舞台も充実一途の舞台だった。作品そのものは荒唐無稽の色恋沙汰の芝居だが、白色の男性裸像の彫像が舞台に林立しているなかで、若い恋人たち4組が満艦飾の言葉遊びの渦をかいくぐって戯れる。そしてこの芝居は若者も年よりも全て男性のオールメール。驚くのは主役のベネデイックを演じたのがこれが初舞台の小出恵介で、その小出が華麗なシェイクスピアの言葉遊びを堂々とクリアしていて、これは蜷川演出の見事な錬金術連としかいいようがない。ほかの高若手の橋一生、長谷川博紀、月田悠貴も言葉を手の内にいれていた。彼らを支えたのは瑳川哲朗、吉田鋼太郎のヴェテランだが、他にさらに下支えした蜷川組の妹尾正文らの常連俳優たちで、彼らが芝居を活気ずける基になっていて、総員が言葉の面白さ、松岡の見事な翻訳を客に手渡した。ばかばかしいような芝居だが、このから騒ぎの舞台から人間の生き様のリアルが透けて見えてきて、数々の名作にましてシェイクスピアの天才を素直に感じることが出来るのだ。まあ、生きているのもそう悪いものではないと、十分感じさせる舞台だった。

by engekibukuro | 2008-10-08 11:30 | Comments(0)  

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