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1月12日ー懐かしい子供の頃を思い出させた二つの舞台

ひとつはTOKYOFMホールで上演されたマチネー「イノック・ガーデン」(作:アルフレッド・テニスン、訳:原田宗典、作曲:リヒアルト・シュトラウス、ピアノ:石井真穂、演出:白井晃)シュトラウスの名曲と石丸幹二の朗読のコラボレーション。いかにも白井好みのきちっとした洗練された作品に仕上がっていた。妻子の幸せな暮らしをもたらすために辛い航海にでたイノックが、途上で船が難破し、孤島で10年暮らし、やっと帰ってきたときにはイノックの幼友達のフィリップがイノックの妻アニーの辛い生活をみかねて援助していたが、イノックの生存を見限らざるを得なくなり、再婚する・・。イノックは再婚して幸せになった家庭をのぞき見て、自分の帰還を隠す。最後にその家を訪ねた情景を子供の頃読んだ本の強い記憶が蘇った。
二つ目は岩波ホールでのソワレ。白石加代子「百物語」シリーズ弟二十六夜。演出:鴨下信一。そろそろ百話に接近してきた。今晩は八十七話「平家物語・壇ノ浦の段」八十八話「耳なし芳一」小泉八雲、八十九話「杜子春」芥川龍之介。杜子春のラストは仙人にもらった田舎の家、いまごろは家の周りの桃の木に花が咲いているだろう・・。その桃の木が蘇った。白石さんはいまや円熟の極みで、たっぷり楽しめるのだが、やはり半村良「箪笥」、内田百間「件」、筒井康隆「五郎八航空」、「阿倍定事件予審調書」など白石加代子特有のエッジが際立つ作品が懐かしい。

by engekibukuro | 2009-01-13 20:57  

1月8日S「秘密の花園」東京乾電池ザ・スズナリ

作:唐十郎、演出:角替和枝。この芝居は27年前に本多劇場の杮落としに書き下ろされたものだ。主役のアキヨシを柄本明、いちよ・もろはの二役を緑魔子が演じた。演出は文学座の小林勝也だった。今回は柄本夫人の角替さんが演出した。初演の舞台を彼女はちょうど娘さんがお腹にいた身体で何回も観たそうだ。積年の念願が叶った演出だろう。ただ、私がこの初演をみたあとで、そのころ通っていたゴールデン街の銀河系という店でたまたま唐さんが隣に坐って
いて、舞台の感想をきいたら、演出にひねりがないとちょっとご不満そうだったのを覚えている。そのご唐組の再演を観たら、やはり、唐作品は演技の唐メソッドと分かちがたいとつくづく思ったものだ。そのほかテレビの人が演出して三田佳子が主演で、唐さんの娘さんがでた10101で上演したものも観たし、演出家によってまるで変ってしまう作品なのだ。今回はちょっと入れ込みすぎた演出だという印象をもったが、いちよ・もろはを演じた高尾祥子のセリフの喋り方が初演の緑魔子を思い出させたし、ラストのいちよ・もろはをのせたボートが舞台を横切るシーンがキレイだった。この作品は物語の場所の日暮里の坂のイメージ、菖蒲を手にして、夕日の輝くその坂を自転車で滑降するイメージが背後に見える、感じられるかが勝負の芝居。ごちゃごちゃした話はすべて日暮里という風土を顕現させるためにある。しかし、この芝居を観ていつもはてなとおもうことがある。冒頭のアキヨシのナレーションで日暮里の陸橋の下を走る貨物列車が房総のほうへ、九十九里のほうへ向かっていると語るが、日暮里だったら常磐線だろう、常磐線は茨城へ向かっていて、房総へは行かないはずだ、それとも秋葉原で曲がるのかしら・・?

by engekibukuro | 2009-01-09 11:37  

1月7日M「ウルリーケ メアリー スチュアート」TPT

作:エルフリーデ・イエリネク、台本・演出:川村毅。TPTのベニサンピット最後の公演。最後にふさわしい力のこもった舞台だった。ドイツ赤軍派の女性闘士ウルリーケとグールドンとの対決の物語。ただし、この芝居の登場人物はほとんどモノローグに近いセリフで構成されていて、その話の内容も難解でほとんど掴みきれない。川村は客をこの難解な芝居に近づけさせるために、日本の連合赤軍・新左翼の問題を挿入した。ベニサンの構造を縦横に生かして、舞台の上の回廊でウルリーケの双子の子供を喋らせ、舞台奥の扉を開閉させて、群像シーンをオ-バーラップさせる。日本赤軍のシンポジウムのシーンでは、植垣とか塩見とか実名で登場、日本の左翼・新左翼が連合赤軍の事件で衰亡したことを問題にして激しい討論をする。半裸の踊り子が出てきたり、入り組んだシーンの交差を川村独特ののスタイルで貫徹し、内容は不分明でもスタイルの強度だけで客を引っ張る。圧巻はグールドンを女王のコスチュームで演じた大沼百合子。10ページはあるというモノローグを屈曲させ変容させて、意味内容を超越して勢いだけで客を感応させてしまう。この大沼を観るだけでも、この舞台は価値がある。川村の力量を如実に示した舞台だった。

by engekibukuro | 2009-01-08 16:43  

1月6日S「動員挿話」三田村組、サンモールスタヂオ

作:岸田国生、演出:三田村周三。三田村さんの初演出。彼はいままで古屋治男、蓬莱隆太、田村孝祐ら彼が学んだ舞台芸術学院の後輩の作家の作品を上演してきたが、今回は舞芸時代、他のクラスが上演したこの芝居が忘れられず、上演したそうだ。明治37年の夏の東京、陸軍将校の家に住み込んでいる馬丁夫婦の話。夫が将校について戦地に行くのを妻が命がけで拒む。夫は妻を愛しているが、馬丁仲間から孤立するのを恐れ、将校の要求も拒めず、一旦は妻に同意するが、結局戦地に行くことを決意せざるを得なくなる。妻は絶望して井戸に飛び込む。国の戦争は私たちの身分とは関係がないと、夫婦の愛だけが全てだと言い張る妻の迫力が胸を打つ。ひとりよがりのエキセントリックな女にみえもするが、彼女のもつエキセントリシーしか国家の暴力にたち向かえる術はないのだと難得できるのだ。深津篤史の演出で新国立劇場でも上演したが、この舞台も岸田の戯曲の凄さを十分に伝えていた。

by engekibukuro | 2009-01-07 11:03  

09・1月3日★初映画・★★初芝居★★★初展覧会

★は昨年暮れに谷岡健彦さんに薦められた映画。ブリテイッシュ・インデイーズのジョン・クローリー監督の「BOY A」。過去にある特殊な人にいえない体験をした青年の物語。そのため毎日が絶体絶命の苦境を強いられて暮らしている。この体験がなになのか書けないのは、この映画の脚本家が、その知識を抜きにじかに画面でこの青年に会ってほしいとコメントしているからで、まさにこの青年は一目みて強烈な印象を与える。演じるアンドリュー・ガーフィールドが素晴らしい。1カット、1カットが総毛だつようなサスペンスを含んでいて、絶対的な苦境に陥って全く救われない人生というものがあるのだと静かに告げるラストは衝撃的だ。ただ、死の寸前でのつかの間愛し合った女性との不可思議な一瞬のイメージの美しさが強烈な浄化作用をもたらす映画でもあるのだ。1月9日まで、渋谷シネ・アミューズ。
★★は、こまばアゴラ劇場「その人を知らず」(作:三好十郎、演出:多田淳之介)東京デスロック。多田は抜群のセンスを持っているが時々奇矯な舞台を作って面食らわす演出家だと思っていたが、この作品でイメージが変わった。三好の著作は09年で公共化されたそうだが、この舞台はテキストを一字一句戯曲を遵守した上演で、三好への多田の敬愛がじかに伝わってきた舞台だった。それはチラシの内面に多田が上演を思い立つ一因になった三好の評論「抵抗のよりどころ」が全文小さな文字で掲載されているのからも知れる。キリストの「汝殺すなかれ」という言葉を文字道理信じきった信者の男が戦時中徴兵を拒否し、戦場で人を殺せない、だから自分を死刑にしてくれと言う男が主人公の芝居。無論多田は新劇とは無縁の演出家。多田独特のシンボリックなパフォーマンスを集積させた演出だ。それが新劇のリアリズムのルーテインや観念臭をとりはらい、多田の三好への敬愛をシンプルに伝えた舞台になっていた。
★★★はパルコPART1「ジャパン・アヴァンギャルドーアングラ演劇傑作ポスター展。天井桟敷、状況劇場、自由劇場・黒テントの宇野亜喜良、横尾忠則、平野用賀らが描いたポスターがジャパン・アヴァンギャルドだという命名は、このポスター群を観て回ると確かだと感じる。今みても鮮度を失わず輝いていた。明日は初競馬「金杯」だ・・・。

by engekibukuro | 2009-01-04 17:46