人気ブログランキング |

<   2009年 10月 ( 16 )   > この月の画像一覧

 

10月8日M★「らくだ」S★★「血の婚礼」

★作:別役実、演出:山下悟、劇団民芸、紀伊国屋サザンシアター。落語「らくだ」を元にして別役が書き下ろした。「らくだ」のほかにも「寝床」「粗忽長屋」などの落語に描かれた情景が点景として出てくる。この舞台はこの人のために別役が書いた大滝秀治の名演技につきる。さすが名優だ。ただ役を生きる、人物が湧き出るような役作りの大滝と、外側から役を演じる他の役者との齟齬を多少感じた。この芝居、貧乏長屋の話だが、今風のポイントとして別役がパンフで語っていること(木村隆のインタビュー)「いま僕にとって一番大きな問題は自殺者3万人という現在の社会だ」という問題意識が芝居の底から感じられることだ。大滝の死ビトのカンカン踊りに「ええじゃないか」の騒乱がかぶさってくるラストシーンにそれが現れていた。
★★「作:フェデリコ・ガルシア・ロルカ、台本:広田敦郎、ステージング:グスタヴォ・サジャク、美術:朝倉摂、演出:門井均」TPT、BanKART Studio NYK/NYKホール。元倉庫の空間には太い柱が4本、それを使ったステージングと武術が素晴らしい。バニサンピットを本拠にしていた門井が、ベニサンの空間をここで想起したのも頷ける。この空間全体を演技空間の舞台にして、客はそれを両側から観る。生演奏でスペイン・グラナダの民謡がふんだんに奏でられ、歌われる。ロルカのシンプルで底の知れない詩劇、最後には血で血を洗うナイフでの決闘にいたる、婚礼のときに、新郎を捨てて、昔の男と逃げ出す女の物語。この悲劇は、男と女、両性の絶対相容れない相克と、女性に対するロルカの底深い、神秘的なまでの憧憬が語られる。門井はこの空間を効果的に駆使して、ドラマをじわじわと盛り上げてゆき、悲劇の終焉での女たちの叫びで最高潮に達した。大沼百合子以下の女優陣がグラナダの荒地の女たちの激情と静謐のダイナミズムを演じぬいた。

by engekibukuro | 2009-10-10 12:21  

10月7日M「バケレッタ!」(作・演出:鄭義信)

勝田事務所×海のサーカス、吉祥寺シアター。初演はフィリッピンでの2006年日比友好年の日比共同制作プロジェクトとして上演された。あとチョンの故郷姫路でも一部分上演された。芝居は小さな劇団の話。この劇団の作・演出家が癌で死んだ。その通夜が幕開き。そこでの思い出話が発端。主として様々な役者、スタッフを、便所のお化けを扱った芝居の稽古風景の中で描いてゆく。キャストは個性派ぞろい。村松恭子、佳梯かこ、若松武志、品川徹、みのすけ、朱源実、荒谷清水。それぞれがそれぞれの劇団での胸に思いわたることだらけの出来事の連続なのだろう、悲喜こもごもの出来事が非情にリアル。なにより鄭義信(チョン・ウイシン)の小さな劇集団の営みへのいとおしいような思いが胸を打つ。「海のサーカス」はチョンの個人劇団で所属は佳梯かこ、「勝田事務所」は村松恭子、この二人が死んだ演出家若松武志を支える劇団幹部を演じた。この芝居がチョンの仲間だった故・金久美子への追悼の思いがこもった作品であることも付言しておこう。

 ★10月3日三田村組「home」でお名前を誤記してしまいました。お詫びして訂正いたします。
  水野ゆう(誤)→水野あや(正)、大西多磨恵(誤)→大西多摩恵(正)。

by engekibukuro | 2009-10-08 12:19  

10月3日M「home」(作・演出:田村孝裕)三田村組

中野ザ・ポケット。老人ホームの話だ。若い人が老人を取り上げるんのは、前田司郎が「新潮」10月号で「逆に14歳」という小説で、五反田のボケがかった老作家と友達のエロチックなアヴァンチュールを書いたりして、老人の私を楽しませてくれたのと同じで、この芝居も身につまされる(?)ようで大層面白かった。キャストの充実ぶりが素晴らしい。主宰者の三田村周三がかって属した、劇作・演出家の故・金杉忠男が主宰した特異な魅力を放っていたアングラ劇団「中村ザ座」の旧メンバー、大崎由利子、桜井昭子、ヒロ植吉、それに元祖演劇乃素いき座の土井通肇、あと水野あや、大西多摩恵、若手でモダンスイマーズの西條義将、さらにナイロン100℃の松永玲子、「志村魂」常連の坂本あきらが加わり、唯一の20代が中島愛子。私は松永、坂本の大ファンだから大喜びだ。作者の田村も蓬莱竜太とともに金杉の舞台芸術学院での教え子だ。老人ホームでの、余生いきばきもない男女の老人たちが最後の人生を謳歌する奮闘振りを描く。ボケがかった老婦人へのピュアな恋慕に身悶えする老人、離婚騒ぎが日常の老夫婦、女子職員のお尻に触るのを無上の喜びにしている爺さん、あと主役は三田村扮する阿部で、この老人は女にだらしなく借金まみれで、妻子を困らせ、一人娘から絶縁された過去を持つ。ある日カっての愛人だった女が入所してきた。この老人は所内に愛人がいて、たちまち三角関係になる。芝居は女風呂を覗くために老人三人が元大工の老人に梯子を作らせ、発覚して大目玉をくらい、首謀の阿部は松永演じる娘がホームに出頭させられるとかの、テンヤワンヤの毎日を田村は巧みに描き、役者陣がそれに応えて客席は笑いがたえない。幕切れが実に鮮やか。不良老人は改心などせず、動脈瘤の患部を抱えてかっての愛人との恋を貫徹したのだ。いま油の乗り切った田村の力がいかんなく発揮された芝居だった。それにしても一人の役者が16回も公演を持続させたことに感服する。この芝居はその持続を祝する大成果だ。カーテンコールで席がかなり余っていると三田村が訴えた。是非観にいってほしい。決して後悔しない芝居だ。11日(日)まで、ウイークデイの6日(火)、8日(木)にもマチネー(14::30)がある。

by engekibukuro | 2009-10-04 14:54  

10月2日S「わたしの舞台」(構成・演出:清水信臣)

劇団解体社、CANVAS。解体社アトリエ・パフォーマンス三部作上演。これが10、11、12月と三回にわたって上演される。10月は「わたしは見ているのではなく信じているのだ」。全体のキャッチフレーズは{「身体ー動物」から「人体ー剥製」へあるいは「無抵抗の病」に冒された「わたし」から不意に語りだされる涜神的イメージのめくるめき}。舞台に思いつめた表情が際立つ美少年がなにやら紙に紙をみずに書いている。痙攣に逆らえない女、寝転がるばかりの男、ペタルを踏む下着姿の女、イエスに「疑いを」を指弾される男、そこにブラジルの薬物中毒のホームレスを踊りで矯正するプロジェクトのヌラヌラした映像が流れる。登場した人間たちは没交渉。ネガテイブな身体表現の不可能性を強いられている時代の反映か・・・。

by engekibukuro | 2009-10-03 11:59  

10月1日S「解体 タイタス ローマの没落」

作:ハイナー・ミュラー、演出:アレクサンドル・ダリエ、ルーマニア・ブランド劇場、日・ドナウ交流年、ルーマニア演劇招聘公演、紀伊国屋サザンシアター。ルーマニア演劇の面白さは、ルーマニア演劇の紹介者でしょつちゅうルーマニアに行っている七児英輔さんから聞いているし、扇田昭彦さんは1回ルーマニアの演劇祭に行って面白さにはまってしまって、毎年演劇祭に行っていて誘われたこともあったりして、今回の公演は絶好の機会で楽しみにしていた。確かに俳優たちは立派な演技で、重厚な舞台だった。相当な力があることを感じさせた。ただ、出し物が少々難しすぎた。シェイクスピアの「タイタス・アンドロニカス」をミュラーが脱構築して、現代の世界へ鋭角的に迫るようなテキストを創ったことは感じられたが、いままで観た「タイタス」の舞台とは異なるのは当然としても、人物が特定できず、劇の流れがよくつかめないのだ。語り手がでてきて、シェイクスピアを改変したミュラーの意図を示唆するようだが、ルーマニア語からの翻訳の字幕が読みにくく、長いナレーションを字幕で読むのと、舞台を観る同時作業が大変ではなはだ理解が遅滞してしまう。字幕抜きで観ると出来事が断片的にしか見えない。こちらの理解力の問題もあるが、もう少し分かりやすい出し物をもってきてほしかったというのが正直な感想だ。ただ、ルーマニア演劇の質の高さは十分に感じられたのだから。

by engekibukuro | 2009-10-02 14:40  

9月30日S「蛮幽鬼」

作:中島かずき、演出:いのうえひでのり、劇団新感線、新橋演舞場。ここしばらくは青木豪や宮藤官九郎の台本で上演してきた新感線の、久しぶりの中島・いのうえコンビの本家「いのうえ歌舞伎」だ。この台本はアレクサンドル・デユマの「モンテ・クリスト伯」・「岩窟王」の翻案だ。物語りは波乱万丈、神出鬼没だが、そこはいのうえ歌舞伎、いや歌舞伎本来の狂言作者に徹した役者本位の台本で、いのうえが、それを美術から音響、音楽、音楽、殺陣など一切のセノグラフィーを司って、役者を大きく活かしてゆく。役者はメインが上川隆也と堺雅人、それに早乙女太一が絡み、女優の目玉はい稲森いずみ、彼らを盛り立てる脇は新感線から橋本じゅん、高田聖子、粟根まことが筆頭で、客演では山内圭哉、山本享、千葉哲也。1幕目は少々かったるいが、2幕目からは俄然盛り上がって、それこそ見せ場の連続で息もつかせない。見せ場の殆どはアクションシーン。役者それぞれの殺陣場面が見もので、大衆劇団のスターである早乙女の目を見張るような華麗さ、ジャパンアクションクラブ出身の山本の躍動感、上川も両者とまっとうに立ち向かうが、しかしびっくりしたのは堺のスピード感溢れるキレのいい殺陣だ。彼らが戦うシーンは迫真そのもので、舞台が濛々と舞い狂う。それと西国の没落した王国の王女の末裔を演じた高田の新感線本来の果敢でユーモラスな面白さが抜群で、一挙に場をさらう。初日は、スタンデイングオベレーション、4度目のカーテンコールでの上川の挨拶はキャラメルボックスのノリ。大部分が女性客だが満員、高額のチケットで、2300円のパンフも売れいるようで、この不況下で大変なものだ。

by engekibukuro | 2009-10-01 14:39