人気ブログランキング |

<   2010年 05月 ( 23 )   > この月の画像一覧

 

5月4日(火)M「ヤナギダアキラの最期の日」ザ・スズナリ

作・演出:畑澤聖悟、渡辺源四郎商店。まったく畑澤という人の発想の才気は凄まじい。それもあまり上演の間をおかずに次々とできてしまうのだから驚く。この芝居の舞台は十和田湖畔の末期癌患者のホスピス。主役のヤナギダアキラは80歳の俳優宮越昭司。まじかに死を控えた元教師やヤクザの老親分が入院している。ヤナギダは元板前らしい。ヤナギダにつきそっているのは孫だという智英、彼女は身重だ。ある日ヤナギダに若い男が面会に来た。この二人の会話が客にはよくわからない。若い男はフィリッピンからきたらしい。ヤナギダは戦争中はフィリッピンの戦場にいた。この男に智英も係わっているらしい。二人の話は戦友同士の思い出話だ。結局最後に明らかにされるが、若い男は戦争中フイリッピンで人魚の肝をマラリヤの特効薬だというので食べた。それが実は若いままで歳をとらない不死の効能を持ち、男の実年齢は90歳、同時期にフイリッピンにいた智英も肝を食べたので身重のまま歳をとっていない。そしてヤナギダの孫ではなく妻なのだ。奇想天外な話だが、畑澤の巧みな作劇術と宮腰の無類の存在感でバカバカしい感じにはならない。自然な死と不老の恐怖が鮮やかに対比されるのだ。ラストは男の不老効果をもつ肝臓を食べる寸前でヤナギダは絶命する。面白い芝居だが、話がややこしすぎて、それを追う客の負担感が過剰なのが難だ。

▼メモ。渡源店主畑澤は店の前掛けをかけて幕開きの挨拶、各種グッズの宣伝、友の会の入会案内など今回は作・演出だけでなく俳優でも出ているので大変な忙しさ。本業は教師で高校演劇の指導もやっている。その上次々と新作を書き地元と東京で上演して、水準を落とさないのだからたいしたものだ。帰途CTで喜志哲雄「劇作家ハロルド・ピンター」(研究社)読了。無類の名著だ。ピンターへのオレの愚かな先入観を除去していただいた。

by engekibukuro | 2010-05-05 09:59  

5月3日(月)S「ほろほろと、海賊」(作:佃典彦)

演出:流山児祥、楽塾、スペース早稲田。楽塾13周年記念公演。13年目の楽塾の熟年女性メンバーは鮮やかに一皮むけた。舞台でどうどうと演技を楽しみ、全員芝居の腕も上がった。佃の脚本も良くて、10数人のメンバーにそれぞれ見せ場をつくり、話の起承転結も無駄がなく、人物も話もぐいぐい客を引っ張った。最近でではオレには佃の最高の作品に思える。長野県の湖に浮かぶ水上レストランが閉店を余儀なくされ、伝説の名人シェフはカスピ湖の世界最高の岩塩を求めてアゼルバイジャンに行ってしまう。残された女給仕たちは男装して海賊になるしかなく、町の住人と対立するという荒唐無稽な話だが、一場一場が面白く、副人物たちも多様で飽きさせない。みんなの腕が上がったから、ミュージカル仕立てにし流山児の演出も冴えに冴えた。歌を芝居のかすがいにしてスピーデイに芝居を運ぶのは流山児の独壇場だ。1時間20分のあっという間のジェットコースターだった。しかし、舞台に重みを与え支えたのは客演した肝付兼太と戌井市郎というパラダイス一座の重鎮だ。特に伝説の名人シェフを演じた戌井の当たり払う存在感は畏怖させ呼び起こす。

▼メモ。終演後会場で、流山児と肝付さんと飲む。連日満員で楽塾最高客数だそうだが、劇評家できたのは七字英輔さんだけだとぼやいていた。たしかに流山児の自己評価はいつも高いが、この舞台は誰が見ても快作だとおもうから、彼のぼやきもわかる。皆さんに「よかった、流山児さんの魂が舞台に乗り移った舞台だった」と挨拶して帰る。かえりにコンビニで肉まんを買う。

by engekibukuro | 2010-05-04 13:09  

5月1日(土)M「闇の光明」(作:ブレヒト、演出:桐山知也)

レパートリーシアターKAZE。KAZEがブレヒトの珍しい芝居を紹介してくれた。売春宿で冷たくあしらわれた男が腹いせに、性病の原因は売春だというふれこみで、売春宿と同じ通りで性病によるむごたらしい患部をホルマリン漬けにして展示する博覧会を開く。客が殺到して、売春宿は閑古鳥。男は入場料で大もうけ。が、売春宿のマダムが、看板娘の写真をちらつかせながら儲けを売春宿に投資して共同で大もうけしようという話をもちかけ、男はその話に乗ってしまう。ブレヒトのテイスト濃厚な短いが面白い芝居だ。が、こういう芝居は余裕たっぷりの幅がある演技があってこそ面白みが横溢すると思うので、その点、マダム役の辻由美子はいいが、他の俳優には一寸不満が残った。


▼メモ。抽象画家末松正樹の生涯を論じた司修著「戦争と美術と人間」(白水社)読了。末松が元々舞踊家志望だったこと、大戦中フランスにいたのは外務省のマルセイユの領事館の嘱託だったこととか、私の好きな画家だけに大いに有益だった。司の末松へのアンビバレンツな思いが色濃い本だ。KAZEのスタジオは東中野にある。おもろへ。谷岡さんがきた。芝居の話と今彼がつくりはじめている俳句の話。帰宅。「悲劇喜劇」6月号がとどいていた。今月は文学座特集で私の書いたものが載っている。それと姪の尾崎有紀子が書いた「『蜻蛉集』とダンヌイツオ 」という論文が載った早稲田大学『比較文学年誌』の抜刷も届く。K馬は最終Rでアンカツが勝った。明日は天皇賞は、アンカツが乗る馬を買うか。

by engekibukuro | 2010-05-02 11:13